2-09. 芽生えた想いと躊躇いの間

4/11
前へ
/608ページ
次へ
 ひとまず事情を知る双子の姉に昨晩の報告をして、対策を練る必要があるだろう。資以外の軍の人間に知られる前に。誤解で魔物ごと払われたら元の世界に戻れる保証もないのだ。  はぁ、とため息をつきながら着物についていた緑青色の帯を結び、くるりと姿見の前でまわるのと同時に、扉を叩く音が響く。 「失礼致します」 「……資さま」 「姫。あれからお身体に変わりはない、ですか……?」  遠慮がちに室内へ入ってきた護衛は、心配そうな表情で姿見の前に立つ音寧を見て、小声で問いかける。  こくりと頷き、資の方へ向き直った音寧は、恥ずかしそうに言葉を紡ぐ。 「はい、いまは大丈夫です」 「そう……か」  音寧が着ている明るい空色の着物には鶸色の小花模様が散らされており、清楚な印象を与えてくれる。ただ、緑青色の帯が全体を引き締めているものの、胸の膨らみやすらりとした脚などの艶かしい身体つきを強調しているようにも見えて、資は思わず顔をしかめてしまう。 「あの……?」 「いや」 「この着物、似合わないですか?」 「そうではない。似合うんだ……似合いすぎて、その」
/608ページ

最初のコメントを投稿しよう!

256人が本棚に入れています
本棚に追加