2-09. 芽生えた想いと躊躇いの間

6/11
前へ
/608ページ
次へ
   * * *  ――な、何を言っているんだ俺は。  自分の恋人でもなんでもない、護衛対象の姫君に口にするにはかなり際どい言動をしてしまったと資は焦る。  昨晩の、彼女の痴態を目にして以来、調子が狂いっぱなしだ。  おまけに今朝早く、あれ(・・)が裏でこそこそ岩波山周辺を嗅ぎまわっているとの情報を傑から得たばかり。姫の存在を知られたらと思った途端、いてもたってもいられなくなってしまった。  綾音に執着していたあれが、彼女にそっくりな姫を見つけだしてしまったら…… 「資さま?」 「失礼……いま、食事を持ってきてもらうから部屋で待っていてくれ」 「食堂でいただくのではないのですか」 「何時だと思っているんだい?」  もうお昼を過ぎているよ、と資に言われて音寧は瞳を瞬かせる。  そんなに眠っていたのかと唖然とする彼女を見て、資は表情を柔らかくする。 「昨晩は無理をさせてしまったからな。ゆっくり休めたみたいだし良かった」 「……ご迷惑、おかけしました」 「いえ。役得だったよ」
/608ページ

最初のコメントを投稿しよう!

256人が本棚に入れています
本棚に追加