2-09. 芽生えた想いと躊躇いの間

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 自分は淫魔に魅入られてなどいないと言ったところで、きっと資は信じてくれないだろう。現に淫の気を吸収するトキワタリの鏡に気づき、音寧から取り上げたのだから。そして、昨晩の禊の途中で気をやってしまったことで、資は淫魔が音寧の内部に隠れてしまったと解釈したに違いない。  誤解ですと思わず返しそうになった音寧だが、もしかしたらこれは彼から精をもらう良い機会かもしれないと黙り込む。 「だから、貴女が淫の気に苛まれて苦しむことがあるのなら……これからも俺が姫を、お慰めしてもいいだろうか」 「……慰める?」 「軍部にこのことが知られたら俺以外の男たちにも昨晩のような、いや、それ以上の行為を強制され、淫魔を退治しようとするだろう。そして、淫魔を退治した報酬として貴女が持っている異能のちからが求められるはずだ。かつての綾音嬢のように精力を与えられて……俺は特殊呪術部隊に居を構えてはいるが、既に第参陸軍からは退役扱いされている。軍にこのことを知らせず、貴女を淫魔から救いたい」 「そのようなことが、可能なのですか?」
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