2-09. 芽生えた想いと躊躇いの間

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「……さすがに綾音嬢と傑には事情を説明しないといけないだろうが、別の任務でピリピリしている軍に姫のこの状態を知らせたくないからな」  資いわく、帝都ではげんざい悪しきモノによる犯罪が蔓延っており、部隊の人間たちはその制圧で忙しいのだという。知恵のついた魔物のなかには人間になりすまし、若い乙女を攫って陵辱した後に殺すという猟奇的な事件もあると言われ、音寧はぞくりと身体を震わせる。 「……うそ、ですよね」 「残念ながらほんとうのことなんだよ。綾音嬢が持つ破魔のちからにも限界があるんだ。だから貴女が淫魔に魅入られた状況にいながら異能を抱いていると軍が知ったらきっと、容赦なく戦いの最前線に投げ込まれてしまう」 「そんな」  綾音はそのような帝都の事情など一言も教えてくれなかった。たぶん、音寧を必要以上に巻き込みたくないと、彼女なりに判断していたのだろう。  このまま匿われた状態ですべてを終わらせれば問題ないと……
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