2-09. 芽生えた想いと躊躇いの間

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 叶わぬ恋などではない、現に自分は未来の夫に恋しているというのに、過去の夫に拒絶されている現実。それでも自分に淫魔が巣食っているからと、音寧の身体を想い人に代わって慰めると提案する資。いったい彼は何を考えているのだろう。やはり軍に隠れて護衛に勤しむという任務の延長上でしか自分のことを見ていないのだろうか。  こんなとき、どう応えればいいのだろう。  音寧が拒めば、彼はきっとこれ以上何も言ってこないだろう。  けれど、彼を拒んだら音寧は綾音から破魔のちからを返してもらうことが難しくなる。彼以外の男性の精をこの身体に受け入れなくてはいけない……それはもっと嫌だ。 「……わかり、ました」  躊躇った後にこくりと、首を縦に振る音寧を見て、資も申し訳なさそうに呟く。 「貴女は悪くない。淫魔を払えなかった俺が未熟なんだ……淫魔よりも素晴らしい快楽を与えることができれば、追い払えただろうに」 「未熟?」  きょとんとする音寧に、資は恥ずかしそうに独白する。 「――俺は、その、経験がないんだ」  自分は未だ童貞である、と。  ゆえに女性を悦ばせる手段に疎く、最後までしたこともないのだ、と……
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