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魔法の媒介になる精液でこの身体を満たして、綾音が預かっている破魔のちからを自分のもとへ還せるように。
――そのためなら、彼に女の悦びを教える淫らでいけない姫君にだって、なれるはず。
「資さま。未熟だというのなら、どうかこのひと夏のあいだに、わたしを満足させられる男になってください」
音寧のなかにいもしない淫魔を滅するため、彼は任務として姫を抱く。
たとえ彼が姫に恋愛感情を抱くことはなくても、互いの身体で慰め合うことで、五代目岩波山有弦を襲名することになった際に覚醒したとされる呪いと恐れられる計り知れない性欲を克服するための礎にはなるはずだから。
きっと、結婚して紆余曲折ありつつも音寧を自分の色に染め上げた有弦の姿は、過去に姫を満足させられるだけの性技を会得したという経験に基づくものだったのだろう。
それならば、自分が彼に伝えなくてはいけない。音寧はそう決意して、資を見据える。
「……姫」
「わたしに想い人がいるのは事実です。けれどもそれは、いまの話ではありません」
「――そうなのか?」
「だから、いいのです」
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