2-11. 初恋の自覚と口づけの練習

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 音寧の行動に驚いたものの、資は彼女を拒まない。捕まえたと思ったはずの彼女に逆に捕まえられているにも関わらず。ふたりの身体がぎしっという音を立てながら寝台に沈む。  資の長い舌が音寧のそれに絡み合う。唇をぶつけ合っていただけの接吻と比べたらはるかに湿り気のある、深みのある口づけ。 「っぷは」 「……鼻で息をなさるのです、資さま」 「――あ、ああ」 「んっ……お上手です、資さま」  呼吸の仕方すらままならない彼の接吻を受け止めて、音寧は資の名を繰り返し口にする。有弦と呼ばないように、何度も、何度も。 「あぁ……資さま」 「口づけとは、こんなにも気持ちの良いものなのだな……」  舌先を互いに突き合わせるように口腔内で戯れに興じながら、蕩けるような表情を浮かべて資の名を繰り返す音寧を前に、彼もまた恍惚そうな笑みを浮かべていた。  自ら舌を差し出すだけで精一杯だった音寧は、歯列をなぞったり歯の裏の気持ちいい場所を伝えるまであたまが働かない。もっと資の舌を感じたかったが、彼が満足そうに唇をはなしたので、音寧も素直に接吻を止める。 「初めての接吻を、貴女とすることができて嬉しい」
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