2-11. 初恋の自覚と口づけの練習

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   * * * 「昼過ぎまで眠っていたのだからお腹が空いているのはわかっていたでしょうに。昨日は夕飯しか食べていないって……どういう状況だったの?」 「……えっと、その」  翌日の朝、様子を見に来た綾音と部屋でふたりきりになれた音寧は扉の向こうで無表情で仁王立ちしているであろう資の方向を見つめてため息をつく。 「資くんがこの鏡をあたしに返してきたってことは……露見し(バレ)ちゃった?」 「あっ――鏡!」  綾音が差し出してきたトキワタリの鏡を見て、思わず受け取ろうとした音寧だが、「だめよ」と手で制されて動きを止める。 「あやねえさま?」 「訊きたいのはこっちの方よ。貴女が愛する有弦さまと鏡越しに顔を合わせたのは初日の夜だけよね? どうしてこんなに淫の気が減っているの?」 「……それは」
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