2-11. 初恋の自覚と口づけの練習

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 今日の綾音は象牙色の涼しげな前ボタン式のワンピースを着ている。似たようなデザインのワンピースをどこかで見た記憶があると思った音寧は姉の「未来から貴女が来たときに着ていたワンピースに似てるでしょ」と言われて思わず赤面してしまう。西ヶ原の洋館の庭園を夫と散策したときに着ていたワンピースで冬薔薇が咲く西洋風の四阿で彼にボタンを外されて、そのまま淫らな行為に溺れた記憶まで思い出してしまったから。 「一昨日の夜にも、有弦さまと顔を合わせたからです」 「でしょうね。それで、自慰に励んでいるところを資くんに目撃された、と」 「……おっしゃるとおりです」  項垂れる音寧を見て、綾音は苦笑する。こそこそ隠れて行動することがいかにも苦手そうな音寧である。元軍人の資に昼夜問わず護衛されているということは監視されていると言っても過言ではないのだ。かつて自分もそうして傑との情事を目撃されていたことを黙って綾音は呟く。 「淫魔に憑かれているとでも勘違いされた?」 「魅入られている、と。それで、禊を……」 「ふうん。だけど音寧は別に魔に犯されているわけではない、でしょう?」
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