2-11. 初恋の自覚と口づけの練習

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 禊と口にしただけで頬を赤らめる音寧に対して、綾音は特に気にするそぶりも見せずにつづきを促す。魔を払うことが自分でできる綾音にとって禊は不要なものだからだろう。もしかしたら禊がどういうものなのかよくわかっていないのかもしれないが。  綾音がそれ以上何も言ってこないのをいいことに音寧は素直に頷き、口をひらく。 「だから資さまは未だにわたしのなかに淫魔がいる、って」 「ほかには? 鏡を渡されたときに『こんな厄介なものを彼女に持たせるな』ってひどい形相で怒られたんだけど」 「……資さまと、契約を結びました」 「え。もう身体を繋げたってこと? やるじゃない」 「違う、んです……まだ」 「どういうこと?」  破魔のちからを綾音から返してもらうためには自分の精力を高めるため資と身体を繋げ魔法の媒介となる精液を体内に摂取する必要がある。けれど彼は童貞で、ましてや音寧は未来の有弦の妻。たとえ護衛とその対象という関係で接近する機会はあれど、すぐに身体を許し合う仲になるのは至難の業だ。
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