2-11. 初恋の自覚と口づけの練習

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 彼は最終的に音寧の身も心も自分のものにすると言ったが、想像以上に初心(うぶ)だった。禊のときのあれは任務だったから勢いで行えただけで、ほんとうは緊張しているのだとはじめての接吻をした際に言われて唖然としたものだ。 「夏の間にわたしを満足させられる男になれ」と発破をかけたのは音寧だが、まさか「有弦から貴女を寝取る」という発言をして契約を迫った彼が「やっぱりまずは口づけから」と撤回してきたのはどうかと思う。それも音寧の腹の音で我に却ってから口にするなんて……と思い出してふたたび憂鬱そうな表情を見せる妹を前に綾音はくすくす笑う。 「まだ二月(ふたつき)もあるじゃない。慌てなくても大丈夫よ」 「そう、ですか?」  裸になって迫っても抱いてくれなかったことを思い出し、心も自分のものにするまでは抱かないと暗に言われてしまった音寧は不安そうに瞳を揺らすが、綾音は心配しないでと優しく告げる。 「資くんにとって、姫は初めての恋なのよ。あたしと傑を見て、反面教師にしちゃったのかもね」 「?」
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