2-11. 初恋の自覚と口づけの練習

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「ううん。初心で堅物で攻略するのは大変だろうけど、その分、手に入れられるものも大きいと思うわ。淫魔に魅入られている姫を救うために努力してくれるはずよ」 「努力?」 「ふふっ。それでも心配なら、日本橋本町にいらっしゃい。あそこは薬種問屋も軒を連ねているから、そういった類のお薬もいろいろあるのよ?」 「――薬」  結婚初夜に飲まされた薬酒を思い出して、音寧は目を見開く。有弦さまがはじめてのわたしのために用意してくれた、気持ちよくなれるお酒。あれは媚薬の一種だったのか、と嘆息し、綾音の言葉に首を振る。 「気持ちはありがたいけど、わたしが岩波山に行くのは危険ですよね」 「資くんと一緒に来れば大丈夫でしょ。傑だって遊びに来てほしそうにしていたもの」  たしかに傑は岩波山にも遊びにおいでと言ってくれたが、父親との確執がある資を連れて、綾音と同じ顔した音寧が四代目有弦のいる本店に行くのはどうなのだろう。姫が父親と肉体関係を持っていると勘違いしている資のことを考えると、難しいのではないかと音寧は苦笑する。 「じゃあ、あたしと音寧が入れ替わればいいんじゃない?」 「え」
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