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この日何度目の接吻か数えるのも億劫になっていた音寧は、顔を真っ赤にしながらも心配そうに顔色をうかがう資に率直に告げる。もしほんとうに自分が淫魔に魅入られているのならば、きっと物足りないと彼を押し倒してことに及んでいるだろう。そのくらい、彼の口づけは上達していた。
「そう、か……?」
「ええ。今夜は、もうすこし先までしませんか?」
自分の腕にくっついたまま、身体を震わせて小声ではしたない提案する音寧を見て、資もまた無言で彼女を抱き上げ、寝台の上へと連れて行く。
横たえられて、ふたたび唇をふれあわせ、瞳をとじた音寧に向けて、資が嘯く。
「……淫魔の誘惑、か?」
「わたしのなかの淫魔がわたしを唆しているように見えますか……?」
「いや。魔の気配がぜんぜんしないから、不思議だな……と」
寝台の上に横になった状態で口づけを交わしながら、資は音寧の様子をうかがう。何度も口づけているから、彼女の唇は美味しそうなくらいぽってりと腫れぼったくなっていて、ふたりの唾液であかあかと濡れている。
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