2-13. 近づく距離と不穏な周囲

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   * * *  朝の戯れなど気にするそぶりも見せず、資は涼しい顔をして杏色のワンピースへ着替えさせ、部屋まで運ばれてきた朝食――サンドウィッチと西洋野菜の冷製ポタージュを食べさせる。  食事の間に資はいちど席を外していたが、音寧がすべて食べ終え一息ついたのを見計らったかのように現れ、自分に来客だと伝えられる。  久々に部屋から外に出された音寧は資に案内されながら階下へ向かう。螺旋階段でふらつく身体を支えられ、思わず快楽の残り火に戸惑ってしまうが、一階で待っている客人たちの姿を確認した音寧は慌てて表情を引き締める。  洋装姿の彼とは過去に翔んだ初日に応接室で会ったきりだ。そしてもうひとり、和装姿の見慣れない男性の姿がある。傑や資と比べるとどこか幼さが残るのは、童顔だからだろう。けれど、音寧を見つめる瞳は値踏みするような冷たさがあり、彼女を怯えさせる。  そんな彼女の反応に気づいたのか、隣にいた資の異母兄――傑が笑顔で話しかけてくる。 「姫、おはよう」 「お、おはようございます……傑さま」 「こうしてみると綾音にそっくりだろう? 征比呂(ゆきひろ)
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