1-03. 岩波山の五代目有弦

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 薔薇のように美しいという祖父の言葉に違和感を感じつつも、資はおとなしく耳を傾ける。 「憐れな百合の花は、帝都を追い出されてしまった。それでも時宮の血を色濃く引く令嬢だ。綾音嬢が死んでしまったのならば、岩波山は彼女を帝都へ呼び戻し、五代目有弦の花嫁に据えるしかない。なんせ時宮の姫君は、時をも味方にするという不思議なちからを持っているというからのう」  夢見るように口にした祖父の言葉を反芻し、資は身震いする。  ――憐れな百合の花。  もしかしたら、自分は過去にどこかで彼女と逢ったことがあるのでは……?  あの夏に、身体を重ねたあの女性は――兄嫁ではなかったのか?  戸惑う資をよそに、祖父の一喝が、室内に響く。  未だ見ぬ令嬢を、岩波山の将来を賭けて、五代目有弦の花嫁とするため、祖父は命ずる。 「かつて時宮音寧と呼ばれた彼女はいま、桂木農園の分家の養女、とねとして生きている。資よ、五代目有弦の名を得るために、彼女を迎えに行くがよい――!」
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