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「媚薬……?」
訝しげに資が征比呂の顔色をうかがえば、そうだとばかりに彼が鞄から小瓶や黄色い粉が入っている薬包紙などを机に並べていく。呆気にとられた資から逃げ出し、音寧は興味深そうにそれらを眺め、傑に問う。
「もしかして、あやねさんから?」
「いちおう姫の存在は軍の機密扱いだからね。そう簡単に外出許可は出せないんだ」
「……やっぱり」
先日、音寧と入れ替わって日本橋本町に行けばいい、と言っていた綾音だが、傑からの許可がもらえなかったのだろう。ただでさえ結納の日が迫っているのだ、四代目有弦と顔を合わせる可能性を考えると音寧が綾音と入れ替わってひとりで日本橋に行くことは難しい。
そのうえ、帝都を騒がせる魔物がいつ出没するかもわからない。人間に扮し乙女を狙う魔物の存在は猟奇殺人犯として報じられており、特殊呪術部隊以外の軍関係者もピリピリしている。魔物を退治する目処はたっていると資は言っていたが、もしかしたら破魔のちからを持つ綾音が必要とされているのかもしれない。今の段階で音寧が巻き込まれたら、自分で自分の身を守ることもままならない。
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