2-13. 近づく距離と不穏な周囲

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 すでに彼女と関係を持ったのだろ? と言いたげな彼のにやにやした顔を前に、資はうっ、と黙り込む。下手なことを口にして恥をかきたくないと口を噤む異母弟から視線をそらし、傑は征比呂に薬酒が入った小瓶と軟膏を置いていくよう助言する。 「あの、もうひとつのは」 「この粉薬のことかい? 君たちには必要ないですよ」  自嘲するような笑みを浮かべ、征比呂は鞄に戻す。どういうことだろうと首を傾げる音寧に、彼は小声でうそぶく。 「不感症の薬ですよ」 「?」 「これは、心と身体の状態に作用する特別な薬なんです……想いあう男女には毒にも薬にもなりません」  結局、資は異母兄に言われるがまま、征比呂から薬酒と軟膏を買うことになった。どちらも傑が綾音と使ったことのある薬だと言っていたので、それならば大丈夫だろうという判断らしい。黄色い粉薬については傑も初耳だったらしく、興味深そうに見つめていた。 「征比呂のとこにはほんと色々な薬があるな」 「岩波山の皆さんにはお安くしますよ?」
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