2-14. 二度目の禊は媚薬とともに

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   * * *  あれからどのくらいの時間が経過したのだろう。  音寧が意識を取り戻したのは浴槽のなかだった。 「資、さま?」 「――すまない、姫」  音寧と向きった状態で抱っこするかのように資が抱えていた。眼帯はつけたままだったが、ふだん身につけている軍服を脱いで素肌を見せている資の姿に、思わずときめいてしまう。  浴槽にはほんのすこしのお湯と、真っ赤な薔薇の花びらが浮かべられていた。噎せ返るような濃厚な花の香りに混じって、前のときには感じなかった野生的な匂いが鼻孔をくすぐる。軍服を脱いだ彼の汗の匂いだろうか。 「禊は?」 「もう、終わった。いまの貴女の身体は清い状態にある」 「え?」 「払魔の手袋にふれられて達したにも関わらず、姫の身体に潜んでいる淫魔は反応しなかった……もしかしたら既に逃げ出したのかもしれない」 「魔が、逃げる?」 「魔を払える俺が姫と繰り返し接触したことで、これ以上姫が魔物の誘惑に屈しず、それ以前に消されかねないと思い知ったか……だからあのとき強い魔の気配が一時的に現れたのか?」
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