2-14. 二度目の禊は媚薬とともに

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 敷布があかく染まっている。透明な蜜ではない、これは、経血だ。 「あ……こんな、ときに」 「月の障りがはじまってしまったようだな。着替えを用意するよ。敷布も新しいものにしよう」 「資さま」 「さすがに血まみれになってまでつづけはしないよ……貴女を抱くのはお預けだ。それにしばらくは裸にして愛撫の練習を行うのも無理だな。残念だが仕方ない……」  これ以上無理をさせてはいけないものな、と資は渋々音寧の身体から離れ、衣装部屋へと消えていく。残された音寧は羞恥で消えたい気持ちになりながら、寝台の傍に据えられていた文机に置かれている懐紙を手に取り、秘処へ当てる。じわりと赤い血が、音寧を正気に戻す。  ――こちらの世界でも、月のものは来るのですね。有弦さまとの間に、お子はできていなかった……  精力を高め破魔のちからを綾音から返してもらうまで、懐妊することは無理だと改めて突きつけられて、音寧はため息をつく。  その姿を遠くから資が見つめていたことに、気づくことなく。
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