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けれど、男にとってみると、それが不服なのかもしれない。初夜の床に薬酒を持ち出し、妻となる女に有無を言わさず飲ませ、自分から彼を求めさせようとしたくせに、右も左もわからない彼女は自身の身体の変化に気づきながらもどうすればよいのかわからないまま、迷子の子どものようにこちらを見つめるばかり。いまにも泣き出しそうな瞳の色は、青みがかった美しい夜の闇のようで、まるで星空を抱くような錯覚を男にもたらしている。
「おとね」
「有弦、さま」
有弦が囁いた名前に反応したかのように、音寧がか細い声で彼の名を呼ぶ。
たどたどしく名前を呼ばれた夫は、嬉しそうに彼女に覆いかぶさり、しっとりとした接吻を贈る。
彼の長い舌先が音寧の歯列をなぞりながら彼女の舌を絡め取る。口の端からたらりと雫のように溢れたのは、ふたりの混ざりあった唾液だ。冷たい唾液が初々しい音寧の乳首に垂れて、尖端を勃ちあがらせ、濃い紅色に染め、艶を放つ。
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