1-05. 祝言と監禁

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 高貴な血統を持つ後継を身籠らせるそのときまで花嫁を監禁して、組み敷き、精を放ちつづけるのが、襲名した有弦に与えられる岩波山の試練だからだ。四代目が傑を身籠らせたのも岩波の呪いのような掟があったから。それによって奥方が早死してしまったのは彼にとって誤算だったのかもしれない、逃げるように別の女――使用人との間につくったのが自分だ。三代目に憐れまれたその女もまた四代目を遺してこの世を去った。  もしかしたら有弦も、花嫁を抱き殺してしまうかもしれない。けれど、これが岩波の男の性なのだから仕方がない。  逃がすつもりはさらさらないが、有弦はなるべく彼女に負担をかけたくないと考えている。  静岡で出逢ったときに、彼女はなくしていた大切な宝物だと、直感が告げたのだ。  ――誰にも渡したくない、出逢ったばかりの彼女に感じてしまったこの想いは、なんだ?  そうまでして彼女を欲するのは何故なのか。時宮の姫君の血が、自分を狂わせているのだろうか。  もしかしたら傑も、時宮の姫君に誑かされていたのだろうか――薔薇のようだと思われていた、可憐な百合の花に。
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