1-05. 祝言と監禁

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 だとしたら自分の花嫁となった彼女は何者なのだろう。はなればなれにされた双子の妹。素朴な茶摘み着物を着た姿は愛らしく、されどどこか懐かしさをも感じさせた桂木家のとね――音寧。  綾音に似た容貌でありながら、男を知らない初々しい乙女。  自分はもしかしたら最低なことをするのかもしれない。何も知らないであろう彼女をいいことに、傑が綾音を淫らに調教していたときのように……有弦なしではいられない身体へと躾けていくのだから。 「薬酒はこちらでよろしかったでしょうか。グラスは主寝室のサイドテーブルに配置しております」 「ああ、問題ない」  祝言に使われた酒とは異なり、西洋風の葡萄酒に似た濃紫色の液体が、透明な硝子瓶のなかで揺れている。震災前の日本橋本町は薬種問屋がひしめき合うことでも有名だったため、このような特殊な薬を手に入れることも容易かった。
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