1-06. 呪詛と渇望

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 三代目も花嫁を抱き潰す勢いで子作りに励み、四代目とそのしたに娘を三人もうけた。幸いだったのは、彼女が複数回の出産にも耐え、四代目の襲名まで生き延びることが叶ったことだ。  岩波山の商売も三代目が才覚を発揮したことで更に活気づき、輸出先や取引先が増え、西ヶ原に西洋風の別邸を建てるまでに成長した。  だが、三代目が四代目にすべてを託して隠居をはじめた頃から、岩波山の商売は少しずつ傾いていた。借金はないものの、外需が減り、売り上げが落ち込みだしたのだ。  しかも襲名時に祝言を挙げた花嫁が四代目の精力に耐えきれず傑を出産した後、死んでしまう。そのうえ四代目は使用人の女性にも手をだし、資を産ませた。資の母は比較的長生きしたが、二人目を妊娠中に帰らぬ人となった。岩波の男に求められると女はその愛の重さに耐えきれず死んでしまうのではないかと資が疑問を抱いたのを、「何を今更」と一蹴したのが異母兄の傑だ。岩波の男は呪われているのかもしれないと本気で考えた彼は、呪詛にも似た伴侶への渇望をどうすれば抑えられるのか悩んだ後に、とんでもないことを提案したのだ。 「時宮の姫を娶りたい」と――……
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