248人が本棚に入れています
本棚に追加
/608ページ
そして五代目有弦の花嫁にと選ばれたのが、時宮家のご令嬢――音寧の双子の姉である綾音、だったのだ。ただ、なぜ時宮の姫君が求められたのか、音寧はまだ怖くて聞き出せていない。祝言の場で親族が口にしていた「有弦どのが求めた」という何気ないヒトコトに込められた、音寧ではない綾音の存在を感じてしまったから……
それでも、いま有弦の夫となったのは音寧である。夫である彼が辛そうにしている姿を見るのは居たたまれない。たとえそこに愛がなかったとしても、彼のために何とかしてあげたいと感じてしまうのだ。
「気を落とさないでください。茶農家の養女として育ったわたしですよ? 健康には自信があります。有弦さまの苦しみが晴れるのでしたら、いくらでも抱いてください……なんて、はしたないでしょうか?」
「嗚呼……はしたなくなどないさ、花嫁どの。毎日のように俺に求められても素直に応じてくれる貴女がいてくれるから、俺は狂わないで済んだんだ。この身に宿る劣情をちいさな身体で受け止めてくれる……おとねが恋しいよ」
「んっ」
最初のコメントを投稿しよう!