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しょせん自分は、時宮の血を持っているだけの、双子令嬢の無能な片割れでしかないのだ。呪詛にも似た岩波山の掟だって、男特有の勝手な言い分かもしれない。
――わたしは、有弦さまにふさわしい花嫁じゃないのに。
彼と肌を重ねつづけていると、本当に愛されていると勘違いしていまいそうだ。
彼はただ、本能のはけ口に、綾音と姿形の似た音寧を求めているだけ。
子を為したら、お役御免と棄てられてしまうのではなかろうか。
もしそうなってしまったら、自分から離縁を口にして、潔く姿を消してしまおう。
それまでは、偽りの花嫁でも構わない、時宮の姫君として、彼の傍に……
五代目有弦もまた、身代わりの花婿であることを知らされていなかった音寧はそう思い込んだまま、心に蓋をして、彼に求められるがままに身体を捧げる日々に没頭していくのであった。
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