1-07. 破魔のちからと形見の鏡

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 時宮家の蔵には明治時代の初頭に西洋から渡ってきたとされるさまざまな装飾品や武具、美術品などが蒐集されている。和風の蔵には場違いな甲冑や洋弓、宝石のあしらわれた首飾りや指輪などが家宝として仕舞われており、ふだんはしっかりと鍵がかけられていた。  表面上は綾音と音寧の祖父が外交官として海外の要人と深くつきあっていたため、となっているが、旧公家華族で日本神道の流れを汲む時宮家の本質を知る人間たちからすると、あれらの宝物はどれもこれも「呪い」や「不思議なちから」を持ついわくのある品々ばかりで、悪しきものを封じるちから――破魔を持つ時宮の一族にすがる形で海外のお偉いさん方が手放したというのが真相だったりする。  蔵に封じられた宝物の多くは浄化されていたものの、危険性が完全になくなったわけではないからと彼らはそれらを封印し、長い間そのままにしていた。  明治から大正へとときが移り、綾音と音寧の祖父が亡くなったことで、蔵の持ち主が双子の父親に代わった。彼もまた破魔の持ち主で、音寧の存在を無視していたのも、その異能を失うのを恐れていたからとも、彼女だけが異能を受け継がなかったからだともされている。
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