1-07. 破魔のちからと形見の鏡

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 鬼ごっこはいつしか隠れ鬼になり、姿を消してしまった綾音を探しに白壁の蔵の前まで足を運んだ鬼役の音寧が彼女を捕まえたところで、双子は鬼ごっこを終了して、芝生にしゃがみ込む。  季節は初秋、裏庭に絨毯のように植えられていた緋衣草(サルビア)がまるで炎のように赤く、妖しく美しく咲き誇っている。 「ところで音寧、見てみて、この鏡!」 「わぁ、木彫りの枠が美しいですね……西洋のお品でしょうか? って、あやねえさま? 蔵から勝手に持ち出したのですか!? 鍵は!? 駄目じゃないですか!」 「鍵ならおとうさまの部屋から拝借しただけよ? いいじゃない、どうせ埃をかぶっていたんだから。こんなに素敵な鏡なんだから、使ってあげないと可哀想よ」 「で、でも……おかあさまが『蔵のなかのものは危険だから』って」 「もう、音寧は怖がりさんね。もし九十九神さまが憑いていらしたとしても大丈夫よ、あたしが大切に使ってあげるから」  ふふふ、と上機嫌な姉と物言わぬ鏡を見比べて、音寧はもう、と苦笑する。
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