1-07. 破魔のちからと形見の鏡

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 蔵のなかのものは危険だと母親は言っていたが、この薔薇と百合の彫刻がされた木枠にはめ込まれた楕円形の手鏡は美しいだけで、危険な感じがしない。たぶん浄化はされているのだろう。  それに破魔のちからを持つ綾音なら、この不思議な鏡を自分のものにしてしまっても使いこなしてしまいそうな気がする。 「この鏡のことは、あたしと音寧、ふたりだけのひみつだからね」 「はい、あやねえさま」  美しい薔薇と百合の彫刻がされた子どもが持つには大きめの手鏡を前に、綾音が悪戯っぽく微笑む。  誰よりも大好きな双子の姉の嬉しそうな表情を見て、音寧も頷く。  ふたりだけのひみつ。  そっくりなふたつの顔が鏡の前でにこりと笑う。  その瞬間、綾音が手にしていた鏡がキラッと光った気がしたのは、気のせいだろうか。 「――いま、その鏡煌めかなかった?」 「え? 気のせいじゃありませんか?」 「そうよね? たまたま西陽に反射しただけよね?」  それは、綾音と音寧の母親が病気で儚くなる少し前のはなし。  あれから数年も経たないうちに、仲の良かった双子令嬢ははなればなれになってしまった。
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