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仏蘭西から取り寄せられたという薄絹を贅沢に使用した夜着を着せられて、音寧は戸惑っている。
「ああ、やはり貴女にレエスは似合うな。白い肌をより美しく魅せてくれる」
「……そう、でしょうか」
黒振袖で祝言を行って以来、音寧は有弦に洋服ばかり着せられている。それか、裸か。
震災以降、普段着は着物よりも非常時に着脱が便利だからと洋装が推奨されはじめ、民衆の間でも標準化されてきてはいるものの、静岡で暮らしていた際は和装ばかりだった音寧からすると馴れないのが現実である。有弦の方が洋装で過ごして仕事をしていることが多いため、結婚当初は洋服の着方を彼から教わることが日課になっていたほどだ。
たしかにボタンやジッパーなど、慣れれば着替える時間がかからないため手早く準備をすることができる。それに、有弦いわく洋装の方が脱がせるのも簡単だ、と……
「いまは観賞しているだけだよ。すぐに脱がせるわけがないじゃないか。せっかくおとねのために作らせたのだから」
「でも、恥ずかしいです……なんだかすうすうします」
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