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夫婦の営みで綾音の形見の鏡を使われて以来、音寧は有弦に抱かれるのが怖くなっていた。彼と愛を交わし、子を為すまではこの洋館から出ることは叶わないというのに、抱かれる都度、彼に双子の姉と比べられているのではないか、やっぱり破魔のちからを持っていない音寧など必要ないのではないか、このまま身籠り産み落としたところで棄てられるだけなのでは……と悪いことばかり考えてしまう。
「おとね?」
「……ゆうげん、さま」
「元気がないみたいだけど、今夜はやめておく?」
「……だ、大丈夫です。でも、有弦さまこそお疲れでしょう? こんな遅くまで……」
仕事から戻ってきた有弦は珍しく和装姿だった。きけば、茶商組合の新年会に顔を出していたかららしい。噂の時宮の姫君を連れてくるのかと楽しみにされたそうだが、彼はしばらく外へ連れ出すつもりはないと言い放ち、その場を唖然とさせたのだという。
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