1-08. すれ違いの蜜夜

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 山鳩色の羽織に藍鼠色の米沢紬、帯の色は襦袢の白よりも赤みがかった灰梅で、質素でありながらも上品な彼の和装姿に見惚れていた音寧はすこし残念に思いながらも彼に言われたとおり、羽織を脱がせ、帯をほどく。  対する音寧はくるぶしまで裾の長い薄紅色の夜着を素肌の上にまとっているだけの心もとない姿だ。有弦が指摘したように、胸元のリボンをほどけば簡単にはだけてしまう作りになっている。今夜も彼に求められるのだろうという甘くてほろ苦い期待をもたせるこの夜着も、音寧のためにと有弦が特注で用意してくれたもののひとつである。 「このまま貴女を抱いても……?」  襦袢を床に脱ぎ落とせば、肌の凹凸が透けて見える短肌着と褌一枚の有弦が音寧の前に現れる。お酒を多く飲んでいたからか、肌の色がほんのり赤い。いつも音寧を啼かせる一物も、興奮しているのか褌の上からも天を突き破りそうな勢いで赤黒く勃起している。  ふだんは音寧ばかり裸にしている有弦が、股の間に這わせていた褌の紐をほどき、自ら全裸になる。茶商らしからぬ精悍な裸体を見せつける彼を前に、夜着姿の音寧の胸が高鳴る。 「……はい、有弦さま」
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