1-08. すれ違いの蜜夜

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 ――時を味方につけるといわれる時宮の姫君だが、家から追い出された彼女に時宮の一族が持つという破魔のちからは期待できない。だが、彼女が持つ血は本物だ。だから資、お前が彼女のちからを引き出すのだ……岩波山の呪詛にも似た強力な愛で。  軍人時代から時宮一族の異常性については耳にしていた有弦……資である。傑が時宮の姫君を花嫁に希った経緯に、彼らが持つ破魔の能力による上書きで初代岩波有弦が遺した呪詛のような掟を上手く封じ込めるのではないかという仮説を聞いたからだ。  傑はその仮説を実証すべく、時宮一族と掛け合い、長女の綾音との婚約を勝ち取った。綾音もまた、傑が次代の有弦となる際に受け継ぐ「業」の深さに気づいていたのだろう、ふたりは意気投合し、瞬く間にお似合いの恋人たちとして世に知れ渡るまでになる。  岩波の家から離れていた資は彼らを羨ましいとは思ったが、自分が有弦になって彼女と添い遂げたいとは考えてもいなかったのだ。
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