1-08. すれ違いの蜜夜

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 ――だというのに、俺が有弦を継ぎそっくりな双子の妹を花嫁に迎えたと知って、彼らは裏で蔑んだ。しょせん軍人あがりのお前が、生まれながらの商売人として死んだ異母兄の真似をするのか、と。  口直しを求めるように洋食にも合うという日本酒を水のように飲み、男たちの不愉快な会話から逃れ、甘味を嗜む余裕もないまま店を出て。  西ヶ原の邸に戻れば、主寝室で夫の帰りを素直に待ついじらしい妻。連日の相手で疲れているだろうに、彼女は有弦が戻るまで寝ようとしない。  薄紅色の夜着をまとった音寧は不安そうな顔をしていたが、有弦が求めれば今宵も身体を差し出した。有弦が苛立つほどに。 「……ゆ、有弦、さまぁ」 「貴女はどこもかしこも美味しいね、食後の甘味にぴったりだよ」 「んっ……はぁ、ぁん……っ」  寝台の上へ蝶の標本のようにはりつけて、夜着のリボンをほどけば薄紅色の布が左右にはだけて音寧のふたつの膨らみから臍、下肢の付け根に至るまでまっさらな肌が一気に有弦の視界に現れる。  そのまま胸元へ接吻し、頂を口に含めば瞬く間に彼女の身体は淫らな反応を起こしていく。
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