1-08. すれ違いの蜜夜

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 れろれろと左右の乳首を舐めまわし、首筋や臍の穴にも舌を這わせば困惑しつつも甘く啼く彼女の声が有弦を悦ばす。 「こちらも美味しそうな蜜が泉のようにあふれているな……」 「きゃっ、有弦さま、そこはダメですっ……!」  顔を下肢の付け根まで動かした有弦は、音寧の言葉を無視して秘芽にむしゃぶりつく。声にならない媚鳴をあげて有弦のあたまに両腕を持っていく彼女に辟易して、彼は一度、顔をあげて呟く。 「――()。優しくしてあげようと思ったけど、抵抗するならおしおきするよ」  結婚してから、毎晩のように優しく彼女を抱いてきた有弦である。けれど最近は彼女があまりにも素直で、初夜のときのような興奮もほとんどない。  ましてや深酒でふだんより気が立っているいまの状況で、彼女にふれていると、おかしくなってしまう。あのときを思い出して、嗤いたくなる。いま、目の前にいるのは、彼女ではないのに――…… 「姫って誰ですか……ゆうげん、さま?」  彼のまとう空気が変わったことに気づいた音寧は、思わず禁句を口にしていた。
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