1-10. 鏡の庭で識った罪

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 蝋梅の黄色い花があちこちで顔を出しはじめた、如月の半ば。  音寧は珍しく邸を訪ねてきた若き叔母に連れられ、庭園を散策していた。 「邸から外に出てはいけない、というだけで、別に敷地内のお庭でしたら問題ないでしょう?」  金城多嘉子(きんじょうたかこ)、と名乗った三十代後半の女性は四代目有弦の年の離れた妹で、三代目夫婦が産んだ四人の子どもたちのなかの末っ子にあたる。五代目有弦の襲名と音寧との祝言のときには四人目の子どもを出産したばかりで顔を出せなかった彼女だったが、今日は久しぶりに帝都へ出る用事があったからと乳飲み子を乳母に預けてわざわざ横濱から西ヶ原まで訪ねてきてくれたらしい。
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