1-10. 鏡の庭で識った罪

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「日本様式の庭園を作ろうとした際に、庭師が勝手に作った池なのよ。だけどご隠居がこの場所にどうしても西洋式の四阿を設置するって言い出したから結局どっちつかずな池になっちゃったわ。向こうにちいさな鳥居があるでしょう? 岩波山の氏神さまを祀っているの」  観鏡池周辺のちぐはぐな景観を苦笑しながら、多嘉子は説明を加えていく。  岩波山、というくらいだからどこかに山があるのかと思っていた音寧だが、茶園そのものを「山」と呼ぶのだと有弦が教えてくれた。そのときに庭先に氏神さまを祀っていると伝えてくれたのなら、お参りに通ったのに……どうして何も言ってくれなかったのだろうと音寧はため息をついてしまう。 「ごめんなさいね、庭の奥まで連れ回しちゃって。四阿で一休みしましょう?」
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