1-10. 鏡の庭で識った罪

8/9

248人が本棚に入れています
本棚に追加
/608ページ
「呪い……ね。息子たちからしたらそう見えても仕方がないかもしれないわね。なんせ四代目襲名の際に祝言を挙げられた朝子さまも、傑を生んですぐに亡くなられてしまったし、照葉も」 「すぐる……?」  それは、「俺が死ねば良かったのに」と有弦が弱々しく呟いた夜に耳にした名前だ。結局、彼にどういうことか問いただすこともできないまま、音寧は心の片隅で燻ぶらせていた。  だけど、五代目有弦である彼が、四代目有弦の息子のことを名前で呼ぶだろうか。  まるで、自分が四代目有弦の息子ではないみたい…… 「もしかして……有弦から何も聞いていないの?」  音寧が首を傾げているのを見て、多嘉子は愕然とする。  祝言をあげて三ヶ月が経過しているというのに、彼はまだ、花嫁に自分が有弦となる以前の話を伝えていなかったのだ……たまたま話に出せなかっただけなのかもしれない、岩波山の嫁となった目の前の彼女もまた、死んだ双子の姉の代わりだと、三代目が口惜しそうに言っていたから。  けれど、何も知らない彼女をそのままにしておけないと、多嘉子は意を決して口をひらく。
/608ページ

最初のコメントを投稿しよう!

248人が本棚に入れています
本棚に追加