1-11. 身代わり同士の苦悩

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「資は傑の異母弟として、岩波家に迎えられたわ。照葉はふたりを同じように育てていたから、傑と資の仲は良かったのよ。ただ、四代目だけは最後までいい顔をしていなかったわね。自業自得だっていうのに、資には公家華族の血が流れていないから、って自分にも一滴も流れていないくせに傑と差別して。お前に岩波山を継がせるつもりはない、稼げるようになったらとっとと家を出ていけって」 「そんな……」  有弦もまた、実の父親に冷遇されていた……音寧は自分の境遇と彼の境遇が似通っていることに気づき、表情を曇らせる。  自分の場合は双子は不吉だからと破魔のちからを有していた姉の綾音を表に出され、母の死後は忌まわしい存在として無視されてそのまま桂木の家に引き取られたけれど……彼はずっと異母兄と比べられ蔑まれながら生きていたのだ。 「でも……それじゃあ岩波山の五代目有弦は」 「岩波傑が時宮綾音を娶る際に、襲名を行う予定だったの。だけどあなたも知っているでしょう……?」  ――大正十二年九月一日に起きたこと。 「震災……ですか」
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