1-12. 空回りした溺愛の果て

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「叔母上が来たんだって?」  仕事を終えて邸に戻ってきた有弦は憂鬱そうな表情をしている。無造作に着ていた服を脱ぎ捨て、下着一枚の恰好になると、フリルを幾重にも纏った、まるで藤の花が垂れ下がっているような淡い薄紫色の夜着を着た妻を抱き寄せ、耳元で問いかける。  逃さないという意志を持った彼の腕に囚われた音寧は素直に首を縦に振り、弁解する。 「お庭を散策したのは、多嘉子さまに誘われたからです……」 「だろうね。だけど、邸から外に出てはいけない、と言われていたよね?」  今夜はお仕置きだよ、と甘い口づけを受けて、音寧の身体がきゅんと震える。  きつく抱きしめられた状態ではじまった彼の接吻は、小鳥が啄むような軽やかなものから、徐々に舌を彼女の口腔内へと侵入させていく過激なものへと変化していく。  祝言を挙げて早三ヶ月、彼に躾けられた身体は口づけ一つで淫らに快楽を求めるようになっていた。壊れ物を扱うような丁寧な愛撫と口づけは今も変わらない。けれど最近はそれだけでは物足りないのか、彼はことあるごとに「お仕置き」と称して音寧を拘束する。
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