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悟は、紙自体がボロボロでは気休めにしかならないだろうが、せめて形を整えてあげようと紙ひこうきをゆっくり開き始めた。破らないようにゆっくりと。
二回も足元に落とされたのだ。これくらいしてもいいだろう。
紙ひこうきが一枚の紙に戻った瞬間、悟は手を止め、目を見開いた。
『た す け て』
かすれた、細い、つたない文字で、確かに、そう書かれていた。
「おい!!」
悟は、部屋中に、いや、隣の部屋まで聞こえるような声を勢いで出した。
嫌な汗が噴き出してきた。
本当にただの直感でしかないのだが、悟はまずいと思った。これは、いたずらでもなんでもなく、本物だと。
改めて、部屋中を見渡す。誰もいない。
すぐに目についた壁際のキャビネット。そのひとつに手をかける。
「開かない……」
そのもう使われていないキャビネットは、ご丁寧に鍵がかけられているようだった。
その場にあるものすべてがそうだった。
これでは、ここに隠れるのは無理だ。
悟は、慌てて、左右の部屋を見に行った。
どちらも部屋自体に鍵はかかっていなかったが、真ん中の部屋と状況はそう変わらなかった。つまり、誰もいない。いる気配もない。
いたずらの可能性もある。それはわかっているのだが、悟はどうにも胸騒ぎがした。
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