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交番にいたのは、気の良さそうな50代くらいの男性警察官だった。
最初、にこにこと悟を出迎えたその顔は、あの紙を差し出され、悟の話を聞くうちにみるみる険しくなっていった。
悟が話し終えると、少年の見た目を詳しく聞いてきた。「窓からほぼ顔しか見えず、距離もあったので」と前置きし、思い出せる限りのことを話した。
その後、警察官は無線でどこかと連絡を取り、巡回中の札を出して悟に道案内を頼んだ。
「ここです。あの5階の真ん中の窓から」
あの廃ビルの前まで来て、悟は最上階を指さし、それだけ伝えた。
「……ありがとうございます。あとは、私たちで捜査しますので、お帰りくださって結構です。通報、ありがとうございました」
険しい顔のまま、悟が指した先をしばらく見つめて、警察官はそう告げた。
中まで案内すると思っていた悟は、その言葉に拍子抜けしたが、何も見つけられなかった自分にこれ以上できることはないと理解し、無線で連絡を取る警察官の声を背中にその場をあとにした。
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