紙ひこうき

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その道の両側は、古びた小さめのビルが並んでいた。もう使われていないビルばかりなのか、人の気配もなく、とても静かだった。時折、そのビルの付属であろう狭い駐車場や、なかには取り壊したあとなのか、立ち入り禁止のロープだけ貼られた雑草だらけの空間がぽっかりとあいていたりした。 まだ日の高いうちは残暑を感じる季節であったが、ややひんやりとしているように感じた。 悟は、初めて通るその道の両側をゆっくりキョロキョロと見渡しながら歩いた。 ひらけた道への交差点が先の方に見えだしたころ、ふいに白いモノが目の前を上から下へ通過した。 突然のことに悟は、一瞬びくっとして、一歩後ろへ下がった。 「なんだ……?」 足元を見ると、くしゃくしゃの白い紙が落ちていた。 おそるおそるそれを拾い上げる。 何の変哲もない紙切れ。しかし、それはただの紙切れではなく、見覚えのある形だった。 よれよれでところどころ破れてもいる、薄汚れた紙。わかりづらかったが、それは確かに紙ひこうきだった。
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