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少年が無事に上がっているのだから、問題はないのだろうが、悟は慎重にビルの階段を上っていった。
2階…3階……4階………5階。
「はぁ……」
階段を登り切った悟は大きく息を吐いた。
趣味は自宅で映画鑑賞。仕事場はエレベーター完備のオフィスビル。自宅はアパートの1階。
30代手前で普段運動をしない悟にいきなり5階分の階段は身体に堪えた。
『阿辺もジム一緒に行かないか? たまには体動かしといたほうがいいぞ』
数日前の最近ジムに通い始めた同期との会話が脳内で再生される。
「気が向いたらなー」なんて、全く行くつもりもない返答をしたが、これは本当に考えた方が良いかもしれない……。
そんなことを考えながら、3つのドアが並んでいる5階の通路で悟はさっき自分が見た窓の位置を思い返す。
ちょうど真ん中辺りだった。
真ん中のドアに手をかける。
「あれ?」
軽く引こうとしたが、なかなか動かない。建付けが悪くなっているのだろう。
悟は右手にぐっと力を込めてドアを引いた。
ギギギギギ……
嫌な音を立てながらドアが開く。
大人ひとりが通れるほど開いたドアから、悟は中の様子をうかがう。
危険はなさそうなことを確認して、一歩踏み入れる。
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