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かつては小さなオフィスであっただろうその部屋は、壁際にある大型のキャビネット数台や壊れた机、椅子が数台隅の方に散乱している以外、何もないがらんとした部屋だった。
一番上の階とはいえ、目の前にさらに高い建物が建ってしまっているせいで日当たりもあまりよくないのだろう、なんとなくじめっとしていて、カビ臭い感じがした。
悟は部屋を見渡した。ドアから一歩入っただけで見渡せるほど狭い部屋だ。
「あれ……?」
そこには誰もいなかった。見当たらなかった。
部屋を間違えたか?
悟は、床の状態を気にしつつ、正面の窓へ向かった。
その部屋の窓は1か所だけ開いていた。
そこから、先ほどまで自分がいた地面を覗き込む。
それから、左右を見渡し、少年が顔を出していたのは確かにこの窓だと思った。
「おーい。誰かいるかー?」
悟は部屋の中に向き直り、狭い部屋全体に聞こえるほどの声で呼びかけた。
声が部屋に反響するだけで、返事も、物音も何も返ってこない。
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