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ばっと、悟はビルの最上階を見上げた。
そこには、あの時の少年。今度は、悟と目が合うとすぐにふっといなくなってしまった。
悟は迷うことなく、紙ひこうきを手に再びビルに足を踏み入れた。
前回より軽く……は全くなっていない足取りで5階を目指す。
はぁはぁと肩で息をしながら、また今度、また今度……とジムへ通うのを先延ばしにしていた自分を呪った。
5階まで上がった悟は、前回と景色が違うことに気がついた。
真ん中のドアが開いている。
悟は、記憶をたどり、前回自分がドアを開けたまま帰ったことを思い出した。
開けたまま帰ったのは確かだ。では、なぜ、そのままなのか。
あの少年があの後もこのビルで遊んでいたのなら、閉まっていたっておかしくないのだ。
現に、あの時は閉まっていたのだから。
多少、ドアが固くとも、大人が片手で開けられるほどだ。あの小ささの子どもでも全身を使えば開け閉めくらいできるだろう。
そこまで一瞬で考えを巡らせたとき、スッと背中を冷たいものが撫でた気がした。
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