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大声に驚き黙り込んでた女の子がまた騒ぎ出す。ツバキさんはいきなり屈み、女の子にニカッと笑顔を見せた。
「よし! お兄ちゃんがおんぶしてあげるよ!」
そのままクルッと後ろを向き、親指で背中を指す。
「あ、大丈夫です。そんな、申し訳ないです。それにこの子人見知りで……あ……」
ママさんは断ったけど、女の子はおずおずとツバキさんの背中にペタッと貼り付いた。
「お? イイ子だねー! よし行こう!」
ツバキさんは女の子をおんぶして、エイッと立ち上がった。俺とママさんを残し階段を登り始める。しばらく呆気に取られ眺めていたけど、歩道橋の時のように顔をクシャッとさせながら振り向き、女の子に話しかける姿になぜかホッとした。隣のママさんへニッコリ微笑み手を差し出す。
「ベビーカー。持ちますよ」
「……あ、すみません」
ママさんは頭を下げ恐縮しつつもベビーカーを手渡してくれた。ママさんと並んでツバキさんの後を追う。
「はいっ! とうちゃーく! おりこうさんだったね!」
ツバキさんの元気な声が聞こえる。やたら長い階段を上がりきった所で、ベビーカーを広げてママさんへ返す。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございました」
丁寧に頭を下げるママさん。
「歩ける? 乗るかい?」
ツバキさんの問いかけに女の子は口に手を当てながら小さな声で「のる……」と答えた。
「そっか! よし!」
ツバキさんは女の子を下ろすと、両脇に手を差し込み持ち上げベビーカーへ乗せた。ママさんが女の子の足をベビーカーからヒョイヒョイと出して、慣れた手つきで素早くベルトを締める。
さすがだな~。
「じゃあね。バイバイ」
俺も女の子に笑って手を振ると目をまん丸にしながらも、やっとちょっとだけ笑ってくれた。
「ありがとうございました。助かりました」
「いえいえ! 気をつけて!」
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