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ここは、沖縄県那覇市より、南方に位置する古民家を改装した孤児院。
あらゆる事情により、親元を離れる事を余儀なくされた子供達が、成人になるまで普通の家庭の様に成長と教育を目的としている施設。
朝6時、この孤児院の院長であり、二人の子供の母親である女性は、いつもの様に人数分の朝食を用意した後に、掃除や片付け洗濯といった家事を済ませる。
一方、その院長である女性の夫は、孤児院の運営資金と自らの家庭を食い繋ぐ為に、仕事へと向かう。
「それじゃ行ってくるよ。」
「うん。気をつけてね。」
「パパァ!!行ってらっしゃい!!」
「あぁ。いい子にしてるんだぞ。」
夫は、子供の頭を力強い大きな手で優しくなでる。
すると、子供は嬉しそうにニコっと笑う。
当たり前の平穏な日常。
変わらない日々程、最も価値があるものである。
夫は家族の為に、身寄りの無い子供達の為に、今日も仕事に励む。
それは、その一歩、玄関のガラス戸を開けた時だった。
「え?」
夫の目の前に、玄関先で倒れる二人の男女がいた。
「おい!!おいあんた!!」
声をかけ、体を揺さぶっても反応が無い。
「ひでぇ怪我だ。」
全身の皮膚が青白く、血みどろに染まり、衣類や頭髪は海水に浸り濡れている。
呼吸と脈を確認する。
「・・・」
・・・
ドクン・・・
「まだ、生きてる・・・ハルカ!!」
夫は妻を呼び出す。
「どうしたの・・・えっ!!」
驚きの表情を浮かべる妻。
「救急車も待ってられない!!先生に電話してくれ!!」
「わかった!!」
ハルカと呼ばれた妻は、孤児院にある固定電話から先生と呼ばれた人物へと電話をかける。
そして、夫は脈が弱い男の方へ応急で心臓マッサージを始める。
程なくして、ハルカも玄関先に向い、倒れている女性へ応急処置を始める。
ハルカ「ユウト君、この二人は一体どうしたの?」
ユウト「わからない、玄関先で倒れてた、まるで水死体の一歩手前だ。先生は?」
ハルカ「すぐに来てくれる。」
ユウト「そうか。だったら安心だな・・・それにしても、この怪我・・・まさか・・・泳いで来たってのか?」
ハルカ「・・・」
ハルカは、男女の状態を確認する。
化膿した切り傷に、衣服には円形の穴と血痕が残る。
ふと女性の胸辺りに銃痕を発見。
それが、この二人には何かとんでもない事が起こったと想像をさせる。
ハルカは女性の上着をめくると、銃弾が貫いた箇所を確認した。
ハルカ「・・・あれ?」
ユウト「どうした?」
必死に心臓マッサージを続けながら、ユウトは唖然としているハルカへと声をかける。
ハルカ「傷が塞がってる・・・これなら大丈夫かも。」
ユウト「そうか、それはよかった。」
ハルカ「私、他にも何か用意してくるね!!」
ユウト「あぁ!!」
ハルカは包帯や傷ぐすり等、手当に使える物を探しに孤児院の中へと入り、それを心配そうに見つめる二人の子供。
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しにものぐるい
それでようやく辿りついた場所・・・孤児院 ひまわり
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