#1 しにものぐるい

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 孤児院ひまわりに、相良剣一と深田優子が保護されてから三日後。 ーーー 相良「・・・」  暖かい。  一番最初に感じた事はそういう感覚だった。 随分と久しぶりだった。 太陽の光に照らされる様な、人肌に触れている様な、そして、布団で横になっている様な・・・  俺は、ずっと冷たい場所にいた。 全身が海水で覆われ、とても冷たい場所だった。 だから、この感覚がとても心地いい。 相良「・・・ん・・・?」  ふと、瞳に光が差し込み、白く染まる視界に瞼が重たい。 相良「・・・ここ・・・は?」  意識が戻りつつあったが、体の全てがあまりにも重い、指一本動かすだけでもやっとで、腰の辺りが特に重たく何かが上から乗っかてるみたいだ。 相良「・・・んぐ・・・」 バタバタ  誰かが走り回り、木が反響する音が聞こえる。 一人や二人ではない、いくつかの足音だった。 相良「誰か・・・いるのか?」  すると、声が聞こえる。 「ユイー!!どこだぁ!!」 「ユイちゃぁーん!!」 ユイ?  誰かの名前か・・・?どうやら探している様子だった。 ガラガラ  引き戸の戸車が回る音、誰かがこの場所に来たようだ。 「パパァー!!ママァー!!ユイちゃんいたぁ!!」 「えっどこにいたの?」 「お兄ちゃんの布団にいる。」 「嘘ぉ?あ・・・本当だ。ユイ、ここで寝てたのね。」  誰かが近づいてくる。 多分、女の人だろうか、静かな足どりでこちらへと近づいてくる。  改めて思うが、俺はどうやら布団で横になっている。という事は、助かったのか? 「ここには大怪我したお兄さんがいるから、入ってきたらダメって言ったのに。」  腰の辺りの重みがなくなったと同時に、女の人に抱えられた小さい子供が目に入る。 「ママァ僕も抱っこ。」 「ハルトは後でね。ユイを見つけてくれてありがとう。・・・あれ?」  女の人と目が会った。 女の人は、俺の横に正座して、こちらを覗いている。 「気がつきました?」 相良「ここは・・・?」 「ここは、孤児院ひまわり。気分はどうですか?」 相良「ひまわり・・・?気分は・・・いい、と思います。それと・・・」 「先生を呼びますね。」 相良「俺と、もう一人・・・」  言葉が辿々しい、喉はガラガラで水分が足りていない事がわかるし、深い眠りから覚めた後で上手く発声もできないが、喋れない訳ではない。 「もう一人の女の人も大丈夫です。横で寝てますよ。」 相良「横・・・・」  首を左に傾けると、そこには、深田さんが眠っている事が確認できた。 ・・・よかった。 心の底から、そう思う。
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