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深田さんは無事だった。
この事実だけでも、俺にとっては十分すぎる。
相良「助けてくれたんですか・・・?ありがとう・・・ございます。」
「いえいえ、気にしないでください。」
女性は優しい表情で答えた。
俺はこの時、この世に聖母という人が存在するなら、この人の事だろうと確信する。
ーーー
しばらくして、白衣を見に纏ったジーパン姿の初老の男性が部屋に入ってきて、血圧や体温を測り、診察を始めた。
「うむ。意識は戻ったが、まだ血圧が低いなぁ。まぁ飯食ったら大丈夫だろう。体は動くか?」
相良「はい。なんとか・・・」
「動くだけでも大したものだ。お前がここに着いて、俺が見た時には酷いもんだった。」
相良「・・・」
「海水に晒され続け傷から菌が入り化膿、さらに血液もずっと垂れ流しで貧血。全身の筋肉は限界を無視して酷使され尋常ではない筋肉痛、サメに噛まれたか鋭利な刃物で切られた跡に、銃弾に撃ち抜かれた傷。よく生きていたと思える程だ。
横の姉ちゃんはまだ意識は戻らないが、こっちの姉ちゃんは銃弾意外の傷は見当たらない。俺の仕事は治すことだから興味はないのだが、お前まさか、この姉ちゃんを守りながらここまで泳いで来たのか?」
相良「はい・・・」
「そうかぁ・・・すさまじいなぁ。だが、喜べ、お前の助けようとした姉ちゃんも無事だ。やりがいがあったな。」
相良「そう・・・ですね。」
「それと、当たり前だがこの孤児院のハルカちゃんと、お前を見つけたユウタ君にもしっかり感謝しとくんだな。薬は置いていく、お前の頑張りに免じて、今回はつけといてやるよ。」
相良「ありがとう。ございます。」
「まぁ、ハルカちゃん・・・」
ハルカ「はい、私達で預かります。」
「そうか。お前が完治するまでは、ここで厄介になれ。とにかく安静にする事と、しっかり食事を取る事だ。」
相良「・・・でも・・・いんですか?そんな迷惑かけて。」
ハルカ「大丈夫です。こういう事には慣れてます。それに・・・」
「あぁ・・・そうだな。ここの元園長さんならきっとそうするだろうな。」
ハルカ「はい。」
相良「すいません。迷惑かけます。」
俺は、深々と頭を下げた。
命を助けてもらって、治療まで受けさせてもらい、さらにしばらく世話になる。
感謝以外になるをするというのだ。
本当に、ありがたい。
「それじゃ、今度は姉ちゃんが起きたら呼んでくれ。・・・あぁそうそう。お前、名前は?」
相良「相良・・・剣一です。」
「そうか、かっこいい名前だな。じゃお大事に。」
医者の男は、荷物をまとめ、幾つかの薬を置いてこの場所を後にする。
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