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医者の男を見送った後、部屋へと戻るハルカさん。
ハルカ「お腹空いたでしょ、ご飯用意しますね。」
相良「あ・・・」
部屋を出ていったハルカさん。
俺は、この時に抱いた疑問がある、それはこの人は俺達の事情を一才聞いて来ず、把握できるのは事実だけだ。
普通はこんな傷だらけで、更に銃で撃たれた傷もあると、何かの事件に巻き込まれたとか、ヤバいと思うのが普通のはずだが・・・
そんな俺達二人が何処から来たのかも聞かずに、全てを包み込む様に受け入れて、無償で手当もしてくれる。
俺は、そんなハルカさんの懐の深さに感服する。
とは言う物の、ちゃんと話さなければならないよな、俺は中国マフィアに拉致されたことも、そこから逃げてきた事も。
ハルカ「お待たせしました。起き上がれますか?」
相良「はい・・・」
ハルカさんが支えてくれながら、ゆっくりと体を起こしす。
布団の横に小さい机を用意し、食事を置いてくれた。
用意された食事は、消化のいい粥に、味噌汁、焼き魚に漬物と八宝菜のあえもの。家庭的な日本食だった。
ハルカ「どうぞ、遠慮せずに飯あがってください。」
相良「いただき・・・ます。」
こんがりと焼かれた焼き魚の身をほぐしてから一口食べ、柔らかくなった白米の粥を蓮華ですくって食べる。
相良「・・・」
そして、暖かい味噌汁を口にする。
相良「・・・う・・・うまい・・・」
気がついたら両目から大粒の涙が流れていた。
一口食べるごとに、これまでの苦労が思い起こされた。
それはこんなに安心でき、心温まる事ではない。
度重なる戦いに喧嘩、命をかけた銃撃戦、死の物狂いで泳いだ海。
その果てに、こんなに懐かしく心が温まる食事に、感動して涙が止まらない。
そんな俺を、ただ黙って優しく迎えるハルカさんは、本当に聖母の様だった。
心も腹も満たして、俺は食事を平らげる。
相良「ご馳走様さまでした。」
両手を合わし、食事と、それを用意してくれたハルカさんに感謝する。
ハルカ「相良くんでしたね。改めて、私はここの孤児院の園長のハルカと言います。怪我がよくなるまで、遠慮せずにここにいてください。それとも、どこか帰る場所がありますか?」
相良「いや・・・ないです。」
俺には、帰る家はない。
両親は6年前に殺され家も解体されて、今はただの更地に成り果てている。
ハルカ「そうですか。ここは、そんな子達が集う孤児院ですから。」
孤児院・・・そうか、俺みたいな事情でここへやってくる人もいるという事か、それでこういう状況にも慣れているんだな。
だけど、それにしてはあまりにも寛大すぎやしないか?
ましてや俺達の状態は事件性が疑われて然り、深く聞いてこないことは俺にとっても都合がいいのだろうが、やはりここは話すべきだろうか。だけど、どう話したらいいのか・・・
それと、話す事は正解なのか?逆に不安にさせたりしないだろうか?
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